一概にハリネズミと言っても沢山の種類がいます。昔から日本に生息している種類や輸入されてやってきたハリネズミ。そもそもハリネズミとは何なのか?どんな生活をしていたの?といったお話をします。
ハリネズミは何に分類されるの?
日本で飼われているハリネズミはヨツユビハリネズミに分類されます。結構有名なペットですが実はあまり研究されていません。そのためあやふやな点も多く適当な事もあります。そのため「今の所そういう事になっている」といった説明になります。認知度が上がっている昨今なので将来的に変わってくることもあるかもしれません。
ハリネズミは哺乳類です。では、哺乳類の中の何であるか…”ハリネズミ目”というカテゴリーに分類されています。生物は外見的な特徴で分類されます。例えばハムスターは”ネズミ目”です。しかし、ハリネズミは見た目通りネズミと呼ばれてはいますが、ネズミではありません。どちらかといえばモグラに近いとさえ言われることもあります。なぜネズミじゃないのかと言うと「げっ歯」と呼ばれる突き出した前歯が無いためです。
ハリネズミ目はここから”ジムヌラ亜科”と”ハリネズミ亜科”に分かれます。
亜科 | 概要 |
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ジムヌラ亜科 | ネズミ寄りのハリネズミ。針は生えていないが硬い被毛がある。ジムヌラという生物がいる |
ハリネズミ亜科 | 日本で有名な愛くるしい”アフリカハリネズミ属のヨツユビハリネズミ”が含まれる。針を背負って身を守るために丸まる |
モグラの仲間だと思われていた原因は、もともとハリネズミはモグラと同じ”食虫目”に含まれていたからだそうです。
げっ歯がないし、モグラとも似てないネズミっぽい生き物の正体は何なのか…。小難しいことを考える必要はありません。ハリネズミの正体は「ハリネズミ」なのです。見た目、そして生態どれを見てもユニークな生き物です。
ちなみに動物園によくいるヤマアラシはハリネズミの仲間ではありません。ヤマアラシはげっ歯目なのでネズミ側の生物になります。
住んでいる場所
日本で飼われているヨツユビハリネズミが属している”ハリネズミ亜科”が生息している地域はアフリカ、ヨーロッパ、ユーラシア大陸に分布されています。かつて日本にもハリネズミの仲間がいたようですが(万年単位ほど前)、今は外来種としてマンシュウハリネズミが野生に生息しています。
中でもヨーロッパに分布しているナミハリネズミは最も研究が進んでいますが、日本でおなじみのヨツユビハリネズミは野生下でどんな暮らしをしているのかよくわかっていないそうです。専用のフードが出てきたのもここ数年なくらいです。
ハリネズミ亜科の仲間たち
種類 | 概要 |
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アフリカハリネズミ属 | |
└ヨツユビハリネズミ | 南アフリカ出身。セネガル、スーダン、ザンビア周辺に生息。乾燥地や茂みで暮らす |
└アルジェリアハリネズミ | ― |
└ケープハリネズミ | ジンバブエ西部、ボツワナ東部、南アフリカ北部など周辺に生息。草原や岩場、サバンナなど様々な場所で暮らす |
└ソマリハリネズミ | ソマリアに生息。草原や開けた土地などで暮らす |
ハリネズミ属 | |
└マンシュウハリネズミ | 中国のアムール盆地や朝鮮半島周辺に生息。森林と開けた土地などで暮らす。アムールハリネズミとも呼ばれ、日本に生息するハリネズミもこれ |
└ヒトイロハリネズミ | トルコ、シリア、ヨルダン、イラン、イラク周辺に生息。都市部や農地などで暮らす |
└ナミハリネズミ | ヨーロッパでハリネズミと言えばこの種になる。ヨーロッパハリネズミとも呼ばれ、ヨーロッパから中央アジアにかけて生息し、ニュージーランドへ移入された。割と人の生活の近くで暮らし、冬は冬眠することができる |
└和名なし(Northern White – breasted Hedgehog) | ヨーロッパ中央部、東部からシベリア西部と広く生息する。農地や公園などナミハリネズミと同じように人の生活の近くで暮らす |
オオミミハリネズミ属 | |
└オオミミハリネズミ | エジプト、アフガニスタン、モンゴル周辺に生息。低森林などに小さな巣を掘って暮らす。耳が大きく愛らしい。昔は日本でもペットとして飼われていたそう |
└ハードウィケハリネズミ | パキスタン南西部、インド東部周辺に生息。砂漠や水場のある半砂漠などで暮らす |
和名なし(Mesechinus属) | |
└ダウリアハリネズミ | 中国北西部の半乾燥地帯、モンゴル、ロシアのアムール周辺に生息。ステップ(背の高い草原)で暮らす。冬は冬眠できる |
└モリハリネズミ | 中国の乾燥したステップに生息するが詳細は不明 |
インドハリネズミ属 | |
└エチオピアハリネズミ | モロッコ、エジプト、アラビア半島周辺に生息。乾燥した砂漠やオアシス、海岸などで暮らす |
└ブラントハリネズミ | イラン、アラビア半島、トルクメニスタン、アフガニスタン、パキスタン周辺に生息。他のハリネズミより濃くて長い針を持つ |
└インドハリネズミ | パキスタン東部、インド西部周辺に生息。砂漠や農地や林などで暮らす。穴を掘って巣を作る |
└和名なし(Bara – bellied Hedgehog) | 南インド固有の種。落ち葉のある木の周辺や岩礁地で暮らす |
暮らしと行動
ハリネズミが普段どのような生活をしているのか知っておくことで飼育方法がなんとなくわかってきます。基本的には「ドントタッチミー」な彼らなので過剰な接触をせずに緩やかな生活ができれば良いでしょう。
ハリネズミの気持ちは非常にわかりにくいです。しかし長い間一緒に暮らすと見えてくる点も出てきます。まずはじっくりと観察し、いつもと違う事が無いか解るようになることが大事です。痛かったり辛かったりしても伝えてくることが殆どないので飼い主の観察眼を鍛える必要があります。
ここからは日本で飼われているヨツユビハリネズミに関する情報を記載しています。
鳴き声を発する
ハリネズミは基本的に鳴きません。しかし全く泣かないかと言うとそうではありません。下記に我が家で把握した鳴き声を記載しているので参考にして下さい。
鳴き声 | 状況 |
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ぴーぴー | 発情。異性を見かけるとアピールする。非常に甘い鳴き声 |
ふしゅ! | 鳴き声と言うより息を吹く感じ。警戒しており防御態勢に入る |
チキチキチキ! | 最大の警戒音。絶対に触れない状態。産後に鳴きやすい |
め゛ぇぇぇ | ヤギのような声。非常に怖がっているとき。この声が聞こえたらすぐに確認して下さい。針や手などが何かに挟まっているかもしれません |
いびきのような音 | リラックスしてだらだらしています |
鼻息 | 何かを探すときなど顔を振りながらふすふす言います。目が悪いので鼻を利かせているようです |
このように、普段出すような鳴き声がありません。興奮したときだけ鳴きます。他のハリネズミと喧嘩して首を噛まれていても声を出さないくらい徹底して鳴き声を発しません。赤ちゃんの時はよく鳴きます。
態度
ハリネズミの態度でなんとなく気持ちがわかります。
行動 | 概要 |
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ケージの扉をカリカリする | 腹減り |
床材に顔を突っ込んで動き回る | 餌を探している。腹が減っていなくてもする |
床を掘る | おしっこの処理やゴキゲン中 |
針が寝ている | リラックス。触れても寝ているなら人馴れしている |
体を擦り付けてくる | 好かれている |
頭の針を立てる | 警戒レベル1。迎撃体制 |
全身の針を立てる | 警戒レベル2。防御態勢 |
針を立てて丸まる | 警戒レベル3。完全防御。触れることなかれ |
腹を床につけて大の字 | 暑い |
単独生活をしている
群れを作らずに単独で暮らしています。オスとメスでも一緒にしてはいけません。幼少期は一緒に暮らせますが人間の飼育であれば2ヶ月もすればケージを分けても良いです。もし一緒にした場合は食い合います。
活動時間
基本的に夜行性です。ある程度は飼い主の生活習慣で変わってきますが日が沈んでからもぞもぞ起きて、深夜帯にガサガサと活発になります。飼い主が見るハリネズミの殆どの姿が寝ている姿になります。暑い時期はお腹を地面につけて眠るのでとても美味しそうに見えます。
活動範囲と運動
野生のハリネズミは一晩で3キロちょっとの移動をするようです。とは言え実際はその距離だけ離れるというわけではなく、巣の周囲数百メートル内の餌を求めて動くようです。そのためある程度運動させることが肥満防止と健康に繋がります。我が家ではサイレントホイールを活用し、苦手な子には部屋の中を散歩させていました。高低差が苦手なので、基本的に厄介な場所へ乗り込んだりはしませんが落下だけは注意しましょう。
暮らす巣
出身は乾燥した場所です。岩の隙間や木の根元などをねぐらにしています。地面を軽く掘ったりもしますが穴掘り能力は低いです。狭くて暗く、温度の変わりにくい涼しい場所が好きです。
食べ物
昆虫やミミズ、カタツムリなどを食しています。雑食なのでカエルやトカゲなども食べたりピンクマウス(ネズミの赤ちゃん)を食べるのも好きです。果物や野菜も食べるので雑食ということになります。しかし非常にグルメで”嫌いなものは絶対に食べません”。大体大さじ2杯くらいの量を食べます。また、初めて口にするものは必ずアンティングと呼ばれる行為を行います。
飼育されたハリネズミはトロくなる事が多いので、虫を与えても捕まえられないことも。その時は虫の足をもいだり、箸で食べさせます。
アンティング
食べ物や初めて目にするものを口に含み、唾液と混ぜたものを体に塗ります。なぜアンティングするのかよく分かっていないようですが、必ず1度行います。物によっては非常に汚いです…。アンティング中は怪獣のような見た目に変形します(誇張抜き)。アンティング自体は産まれて毛が生え揃ったらやり始めるので本能的に組み込まれているようです。
針に毒がある
ハリネズミの針には毒があります。毒いっても生命に関わるものではなく、肌が若干痒くなる程度です。
冬眠と夏眠
冬眠とは寒い中で寝ることですが、夏眠は馴染みがないかもしれません。夏眠とは暑すぎると寝てしまう事です。
ハリネズミの中には冬眠する種がいますが日本で飼われているヨツユビハリネズミは冬眠できません。厳密には冬眠っぽい低体温症を発しますが、こうなるとほぼ死にます。もしその状況になった場合は緩やかに温める必要があります。実際に経験がありますが体が冷たくなり浅い呼吸になります。内臓系が悪くなってしまうらしく、実際に冬眠後におしっこが垂れ流しになったり足が麻痺するなど多大な悪影響がありました。発見が早かったので延命は可能だったようで、冬眠から1年くらいは生存できました。
熱くなりすぎると餌が不足する季節を本能的に察してしまうようで夏眠するようです。冬眠ほど体の負担は大きくないようですが避けなければなりません。基本的に室温を26〜7度で保つ必要がります。30度超えると夏眠のリスクが出てくるようですが、飼育されているハリネズミはこの限りではないかもしれません。夏眠しないとしても暑さでダウンするので気をつけましょう。
ハリネズミの体
ハリネズミは視力が弱く耳と鼻と口を頼りに生活しています。そのため十中八九発症する白内障を患わっても元気に動きます。それでも光には敏感なので突然影になったりするとビックリします。明るい場所も落ち着かないので完全に孤立できる暗所を準備してあげましょう。
視覚
視力は弱いですが、暗闇の中でも識別する能力はあります。野生生活の中で遠くまで見る必要がないゆえのド近眼と言えるかもしれません。ナミハリネズミの研究になりますが色彩感覚がないという話もあるくらい視覚にたいする能力を削っているようです。ハリネズミのアルビノが有名ですが、アルビノの場合はさらに視力が弱くなっています。しかし視覚にそれほど頼っていないので問題なく生活できます。
嗅覚
ふんふんとよく鼻を鳴らしヒクヒク動かしながら行動します。嗅覚は非常に発達しており敏感です。餌が近くにあればすぐに気が付きますし、知らない人が家に来ればあからさまに警戒します。
また、ハリネズミの口の”ヤコブソン器官”と呼ばれる箇所が発達しており、口の中でも匂いを感知しています。そのため口をちょこっと開けて歯をのぞかせながらふんふん匂いを嗅ぎます。非常に愛らしい行為です。
聴覚
鼻同様に聴覚も発達しています。飼い主とその他の人の声を聞き分けるようですが、そもそも声をかけて寄ってくるものでもないので実感はありません。しかし餌袋の音がすると近寄ってくるので音を聞き分けて記憶しているようです。
甲高い落下音に非常に敏感なので注意が必要です。ドスン!という音や振動は比較的しらーっとしています。
音の周波数が60kHz以上の音が聞こえるため(人間は20kHzまで)、人には聞こえない領域の鳴き声で子供とコミュニケーションしているそうです。
脳みそ
同サイズの哺乳類と比べると小さな脳みそです。しかし喜怒哀楽は確実にあります。物や人を覚えるし、体の使い方もトライアンドエラーで賢くなっていきます。ケージの構造にもよりますが、扉の開け方も習得可能です。
とても不思議だったのがサイレントホイールで遊べることがすぐに理解できること。なんと生後1ヶ月の赤ちゃんでも走り出すんです。
カラーバリエーション
ヨツユビハリネズミはとてもカラーバリエーションが豊富です。毛の色もそうですが、模様の付き方でも分かれています。その種類は100パターンほどもあるそうです。
カラーを見分けるポイント
項目 | 概要 |
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針の色 | 針1本の色の状態です。バンドと呼ばれる色の異なる部分がある |
皮膚の色 | 背中の頭部寄りの皮膚の色 |
被毛の色 | お腹や顔の柔らかな毛の色 |
マスク | 顔の鼻から目下にかけての色。端的に言えば口周り ピンクの肌にクロブチの個体もいる |
大まかに分類するならば”茶色”か”白”か、です。基本的に茶色と白が混ざっていますが配色バランスが茶色よりか白よりかに傾きます。白色でも若干茶色が入っている場合はオレンジ色っぽく見えます。それに合わせて顔が黒だったり白だったりします。針の色はブチのようなパターンも存在します。
スタンダードカラー
ソルト&ペッパー | 針は白く、黒いバンドがある。白一色の針は5%未満を指すので地肌が黒く、毛先の白がまぶしてあるように見える。皮膚と被毛は真っ黒 |
グレー | 針は白く、黒いバンドの外側に非常に狭い茶色がある。皮膚はグレー |
チョコレート | 針は白く、焦げ茶色のバンドがある。皮膚は明るいグレーで、マスクが非常に明るい茶色 |
ブラウン | 針は白く、明るい茶色のバンドがある。白一色の針は5%未満 |
シナモン | 基本的に白く、薄い茶色のバンドがある。白一色の針は5%未満 |
シニコット | 基本的に白く、50%が薄い茶色で残りがかすかにオレンジがかっている |
シャンパン | 基本的に白く、ほとんどがかすかにオレンジがかっている |
アプリコット | 基本的に白く、薄いオレンジ色のバンドがある |
その他の色
様々なタイプを調べたい方はこちらが参考になります。写真も掲載されているので興味のある方は見てみて下さい。
>https://www.hedgehogcentral.com/colorguide.shtml
色は狙って探せるものではないので参考程度にしておきましょう。